吸引分娩とは?リスクや合併症はある?保険は?

自然分娩での出産時に赤ちゃんが下りてきているのになかなか出てこない!という場合に、赤ちゃんの頭を吸引器で吸引して引っ張り出す「吸引分娩」で赤ちゃんを取り出すことがあります。吸引分娩はどんなときにするのか、気になるリスクや合併症、保険対象となるかなどについてご説明します。

吸引分娩・鉗子(かんし)分娩とは?

妊婦 分娩

子宮口が開き、赤ちゃんがある程度産道をおりてきているのに、なにかしらの原因で赤ちゃんが出てこられず、ママと赤ちゃんの健康状態をみてこれ以上分娩が待てないと医師が判断した場合、吸引分娩、鉗子分娩になるケースがあります。

子宮口が全開大になり、児頭が鉗子分娩、吸引分娩をおこなえる位置までおりていれば、経膣(けいちつ)分娩による急速遂娩(鉗子分娩、吸引分娩)をおこないますが、それも難しい場合は緊急帝王切開に切り替えることがあります(※1)。

吸引分娩

赤ちゃんの頭をシリコン製の吸引カップで密着させ、ママのいきみに合わせて引っ張り出す方法。吸引分娩とあわせて、ママのお腹を押して出産を補助する「胎児圧出法」が同時におこなわれる場合もあります。

鉗子分娩

鉗子とは2枚のヘラを合わせたような形の金属製器機で赤ちゃんのあごから頭をはさみ、いきみに合わせて赤ちゃんを誘導します。より緊急性の高い難産のときにおこなわれる方法ですが、ある程度おこなえる病産院は限られています。

吸引分娩はどんなときにするの?

クエスチョン ?

お産がスムーズに進めば、吸引分娩をすることはありません。ママや赤ちゃんにこれ以上負担をかけたくない場合などに吸引分娩、鉗子分娩はおこなわれます。それでは、具体的にどのような状況でおこなわれるのかご紹介します。

陣痛促進剤を使用してもお産が進まない

通常、初産婦の場合、陣痛が始まってから赤ちゃんが生まれるまでの時間は、12時間~15時間くらいです。微弱陣痛や回旋異常などでお産が長引いてしまうと、赤ちゃんとママに負担がかかり、赤ちゃんに十分な酸素が送られずに危険な状態となってしまうことがあります。

微弱陣痛とは、陣痛の間隔が長い、または陣痛の続く時間が短いことで、微弱陣痛が続くとお産がなかなか進みません。微弱陣痛が続く場合、お産をスムーズに進めるために、陣痛促進剤を使ってより強い陣痛を促します。陣痛促進剤を使用してもお産が進まない場合は、吸引分娩や鉗子分娩、それも難しいときは緊急帝王切開に切り替わります。

回旋異常をおこしている

回旋異常とは、赤ちゃんがうまく産道を通れない状態のことです。通常、赤ちゃんは体の向きを変えながら子宮から外へと出てきます。ママの骨盤の形や、赤ちゃんの姿勢や頭の大きさなどが原因で、赤ちゃんがうまく体の向きを変えることができないと、スムーズに子宮から外に出てくることができないため、お産が長引いてしまいます。

赤ちゃんが回旋異常をおこした場合も、陣痛促進剤の使用や、吸引分娩、鉗子分娩、それも難しいときは緊急帝王切開をおこないます。

赤ちゃんに異常がみられたとき

赤ちゃんの体の機能や呼吸に問題が起こり、赤ちゃんの心拍数などに異常がある場合、赤ちゃんに負担をかけずに分娩を進める必要があります。お産に時間がかかると、弱っている赤ちゃんにさらに負担がかかり、赤ちゃんの健康に問題が残ってしまうことがあります。

赤ちゃんに異常があるとわかった場合は、陣痛促進剤の使用や、吸引分娩や鉗子分娩、緊急帝王切開などで、すみやかに赤ちゃんを誕生させ、適切な処置をします。

ママに持病がある場合

ママに心臓の病気や高血圧などの病気がある場合、陣痛が続くことで、ママの病気が悪化する可能性があります。通常の分娩ではママの体に負担がかかると判断された場合、分娩の時間を短くするために陣痛促進剤が使用されたり、吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開がおこなわれたりします。

出産を急いだ方がいいいと医師に判断された場合に陣痛促進剤を使用したり、吸引分娩や鉗子分娩をおこなっても難しい場合は、緊急帝王切開となることもあります。

吸引分娩をおこなうときの条件は?

医師 妊婦

出産中に異常があった場合に、必ず吸引分娩がおこなわれるわけではありません。吸引分娩という方法が最適であると判断され、条件が整っている場合に吸引分娩がおこなわれます。

破水している

子宮の中の赤ちゃんを包む膜が破れ、羊水が出てくることを破水といいます。破水していない場合、赤ちゃんは膜に包まれた状態のため、赤ちゃんの頭をカップで吸引することができません。

陣痛より先に破水した場合は、陣痛促進剤でお産を早めるようにします。それでも子宮口が開かない場合は、帝王切開になる場合もあります。

ママの子宮口が全開となっている

子宮の入り口は、陣痛が始まってから少しずつ開いていきます。子宮の入り口が全開となっていない場合、吸引分娩で赤ちゃんを安全に引っ張り出すことができません。ママの子宮の入り口が全開となっている場合に、吸引分娩や鉗子分娩がおこなわれます。

赤ちゃんが比較的元気

赤ちゃんが弱っていて、少しでも早い処置が必要な場合などは、確実に赤ちゃんを取り出すことができる帝王切開分娩が選択されることが一般的です。赤ちゃんやママの状態によって、吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開のいずれかを検討します。

赤ちゃんの頭が骨盤まで降りてきている

吸引分娩では、赤ちゃんの頭に器具を装着して赤ちゃんを引っ張り出します。赤ちゃんの頭が下降していると吸引分娩をスムーズにおこなうことができます。

赤ちゃんの頭がママの骨盤を通れる大きさ

ママの骨盤の大きさに対して、赤ちゃんの頭が大きすぎる場合、吸引分娩でスムーズに赤ちゃんを引っ張り出すことができません。赤ちゃんの頭がママの骨盤を通れない大きさの場合、吸引分娩や鉗子分娩ではなく、帝王切開となります。

吸引分娩のリスクや合併症は?

医師

吸引分娩によりお産をスムーズに進めることができますが、赤ちゃんの頭やママの産道に負担がかかり、合併症を起こす場合もあります。赤ちゃんとママの体の安全と、吸引分娩のリスクを考えて、吸引分娩を実施するかが判断されます。

赤ちゃんの合併症

頭血腫

吸引分娩で頭を強く圧迫したために、頭蓋骨とそのまわりの骨膜の間に血液の塊ができてしまうことがあります。頭血腫は時間が経つと自然になくなることが多いため、通常、特に治療はおこなわれず、経過観察となります。

帽状硬膜下血腫

吸引分娩や鉗子分娩などによる強い圧迫で、頭蓋骨を包む帽状硬膜と骨膜の間で血腫ができてしまうことがあります。帽状硬膜下血腫で出血量が多い場合、出血性ショックなどを起こす場合もあります。状態を正確に把握するために精密検査がおこなわれたり、出血が多い場合は輸血などの処置がおこなわれたりします。

頭蓋内出血

赤ちゃんの頭蓋内は未熟で、低酸素状態が続くと出血が起こりやすくなります。頭蓋内出血は、吸引分娩の直接の影響ではなく、陣痛促進剤の使用や分娩が長引くなどが原因で、赤ちゃんの低酸素状態が続いたことで起こる合併症とされています。

ママの合併症

会陰裂傷

吸引分娩で、赤ちゃんが生まれてくるときに、会陰裂傷を起こす場合があります。会陰裂傷を防ぐために、吸引分娩の前に会陰切開をすることもあります。切開した部分や、裂けてしまった部分は出産後に縫合します。

子宮頸管裂傷・膣壁裂傷

陣痛促進剤や吸引分娩、鉗子分娩などで急にお産を進めると、子宮頸管や膣壁に負担がかかるため、子宮頸管や膣壁が裂けてしまう場合があります。また、吸引分娩の吸引カップを赤ちゃんに装着するときに、子宮頸管や膣壁などに傷がついてしまうことも。傷の程度によっては出血が多くなることもあるので、止血・縫合がおこなわれます。

吸引分娩で赤ちゃんの頭が変形する?

新生児 頭

赤ちゃんの頭はやわらかいため、吸引分娩で頭を引っ張った影響で、赤ちゃんの頭が変形することがあります。吸引分娩で赤ちゃんの頭が変形するかどうかは、吸引カップを装着した位置や、吸引分娩にかかった時間、吸引の強さなどで異なります。吸引分娩をすると必ず赤ちゃんの頭が変形するとは限りません。

吸引分娩の跡は消える?変形した赤ちゃんの頭の形は戻るの?

生まれたばかりの赤ちゃんは、頭に吸引カップや器具の跡が残ることがありますが、しばらくすると目立たなくなるので心配いりません。変形した赤ちゃんの頭の形は、成長していくとともに自然と元に戻ることがほとんどです。頭の変形が元に戻らず気になる場合は、出産後に退院するときや1ヶ月健診のときなどに医師に相談してみましょう。

吸引分娩は保険の対象となる?

お金 貯金箱

異常分娩による吸引分娩は健康保険の適用となります。この場合には、民間の医療保険の対象となる可能性があります。

健康保険と民間の医療保険の違い

保険には、全ての人が加入する健康保険(公的医療保険)と、民間の会社が運営し、自分で選んで加入する民間の医療保険とがあります。健康保険も民間の医療保険も正常な妊娠・出産は、原則として保険給付の対象外となります。なお、出産・育児一時金は、健康保険より給付されます。

異常分娩による吸引分娩は健康保険の適用となる

正常な妊娠・出産は健康保険の対象外のため、原則として全額自己負担となります。通常、吸引分娩はママや赤ちゃんに異常がある場合におこなわれるため、異常分娩として扱われるのが一般的です。異常分娩による吸引分娩を実施した場合は、健康保険の適用となり、自己負担分は3割となります。

ただし、分娩介助の費用(母体・胎児・新生児の処置や介助など)は健康保険の適用とはならないため、全額自己負担となります。

吸引分娩を実施した場合、保険適用となる医療費の自己負担分は総医療費の3割となりますが、正常な出産と比べて処置や手術の費用が上乗せされ全体の医療費が高額になることと、分娩介助の費用は全額自己負担であることから、必ずしも正常な出産に比べて医療費の負担が少なくなるとは限りません。

民間の医療保険の給付金がもらえることも

吸引分娩は健康保険の診療区分では手術に分類されます。吸引分娩が異常分娩によるもので健康保険の適用となる場合、民間の医療保険の給付対象となる可能性があります。

民間の医療保険では、加入している保険により保険料が支払われる条件などが異なるので、「入院○日以上」や、「○○の手術」など保険料が支払われる条件を確認してみましょう。保険の契約のしおりなどを見てもわからない場合は、加入する保険会社に電話やメールなどで確認するのが確実です。

保険会社に電話で確認するときは、病院でもらった領収書や診療報酬明細書が手元に用意しておくと話がスムーズに進みやすいですよ。

吸引分娩は医師の判断に任せて

新生児

吸引分娩には合併症などのリスクもありますが、お産をスムーズに進めることで、ママや赤ちゃんへの負担を減らすことができるというメリットがあります。吸引分娩で赤ちゃんの頭が変形してしまうことがありますが、多くは自然に治るので心配ありません。

また、吸引分娩をおこなった場合は、医療保険から入院給付金や手術給付金が支払われることもあるので、確認しておきましょう。お産が順調なら吸引分娩になることはありませんが、吸引分娩について事前に知っておくことで、急な事態でも冷静に対応することができますね。

※1 参考文献:吉田産科婦人科医院 急速遂娩法についてト

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