【医師監修】妊婦は貧血になりやすい!症状や対策、おすすめの食べ物は?
妊婦の貧血の症状は?
もともと貧血は男性よりも女性に多く、特に20~30代の若年層の女性に多い症状です。
さらに、日本国内の妊婦さんの貧血の割合は全体の約30~40%に上るというデータもあります。特に妊娠後期の妊婦さんは貧血になりやすく、分娩時の出血に備えるためにも貧血の対策が必要です。
妊婦さんの貧血によって起こる代表的な症状は次のとおりです。
- 顔色が悪い
- めまいや立ちくらみがある
- 疲れやすくて体がだるい
- 朝の目覚めが悪い、疲れが取れない
- 就寝時の寝付きが悪い
- 耳鳴りがする
- イライラしたり、情緒不安定になりやすい
- 起きている時、ぼーっとしてしまうことがある
- 少し体を動かしただけですぐに息が上がる
- 少し動いただけで動悸がする
- 爪が弱くなり割れる、へこむ
これら貧血の症状がひどく感じる妊婦さんは、一度かかりつけの医師に相談しましょう。また、妊婦貧血は非妊娠時にも起こる脳貧血とは異なり、自覚症状がないこともあります。
妊婦の貧血の数値はどのくらい?
妊婦さんの貧血の検査は、病産院によって異なりますが、一般的には2~3回程度。主に妊娠初期と妊娠後期におこなわれ、血液検査で数値を測ります。
血液検査では、赤血球、白血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット等の複数項目の数値をチェックします。その中で、貧血と特に関係性が高いのがヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット値(Ht)、赤血球数(RBC)の数値です。
健康な女性のヘモグロビン値は12.0g/dl~15.0g/dl、ヘマトクリット値は36%~42%ほどだといわれています。WHO(世界保健機構)による貧血の基準では、妊婦の場合、ヘモグロビン値が11.0g/dl未満とされています。
基本的には、この数値を下回った妊婦さんには、状況に応じて注意勧告や食事の指導、サプリメントのすすめ、さらには鉄剤が処方されることがあります。また数値が二桁以下になると貧血の症状が強くなります。
妊婦が貧血になりやすい原因とは?
妊婦さんはお腹の赤ちゃんや胎盤に血液を運ぶため、血液内のヘモグロビン濃度が薄くなります。
また、妊娠すると胎児の成長のために鉄分必要量が増加し、母体の鉄分は胎児に優先的に送られるため、鉄欠乏性貧血になりやすくなります。妊婦貧血の90%以上は鉄欠乏症貧血だといわれています。
妊婦の貧血の対策に摂りたい食べ物
妊婦さんの貧血の予防・対策には、食事の見直しをしましょう。鉄分を豊富に含む食べ物を意識的に摂るようにしてください。
また、貧血になりやすいのは妊娠中だけではありません。産後の授乳中も貧血になりやすいといわれています。母乳のもとになる「血液」をつくるためにも、鉄分を多く含む食べ物を意識して摂るようにしましょう。
妊娠中に必要な鉄分/日
- 妊娠初期:9mg
- 妊娠中期~後期:21.5mg
- 授乳中:9mg
鉄分を多く含む食べ物
※数値は100gあたりに含まれる鉄分量
ひじき | 55mg |
油揚げ | 4.2 |
納豆 | 3.3mg |
ほうれんそう | 2.7mg |
小松菜 | 2.1mg |
煮干し | 18mg |
干しえび | 15.1mg |
あさり | 3.8mg |
豚肉レバー | 13mg |
鶏肉レバー | 9mg |
切干大根 | 9.7mg |
いわし丸干し | 4.4mg |
食べ物から鉄分を上手に摂るポイント
薬やサプリメントと違って食材には副作用の心配がなく、妊娠中も安心です。ただし、鉄分を含む豚レバーや鶏肉レバー、うなぎにはビタミンAが多く含まれており、妊娠初期にビタミンAを過剰摂取すると胎児に影響を及ぼす影響があります。
すべての栄養素にいえることですが、特定の食材・食品を摂り過ぎることなく、できるだけ栄養バランスのよい食事を心掛けましょう。
また、肉・魚・卵・乳製品などの動物性たんぱく質やビタミンCには、鉄分の吸収率を高めてくれる働きがあるため、一緒に摂るのがおすすめです。
妊婦の貧血の対策に薬やサプリの服用は医師に相談しよう
貧血に効く医薬品は手軽に貧血の対策ができる反面、妊娠中の服用は副作用などに注意が必要です。市販薬は自己判断で飲まずに、かかりつけの医師に確認してください。貧血の症状がひどいときは、病産院で鉄剤を処方してもらうことができます。
また、妊娠中に必要な葉酸や鉄分が含まれた、妊婦さん用のサプリメントもあります。サプリはたくさん飲めば効果がある、というものではないため、サプリに記載の目安量を守るようにしましょう。
妊婦は貧血になりやすい。胎児の成長と安全なお産のためにも改善しよう
妊娠中の貧血は多くの妊婦さんが経験します。貧血はめまいや疲労感を感じるだけでなく、お腹の赤ちゃんの成長のため、また分娩時の出血に備えるためにも、しっかり予防・対策したいですね。
まずは、食事を見直して鉄分を含む食べ物を意識して摂るようにしてください。ただし、同じ食べ物ばかりに偏るのはよくありません。バランスのよい食事を心掛けましょう。
また、貧血の改善がみられないようであれば妊婦健診のときに医師に相談しましょう。
関連キーワード
妊娠中の健康・体調変化 妊娠後期 栄養素