【医師監修】乳児湿疹の原因に母乳やママの食事は関係ある?
乳児湿疹とは?
乳児湿疹とは、生後間もなくから1歳くらいまでに、赤ちゃんの顔や体に起こる肌荒れ症状の総称です。
ほとんどの乳児湿疹の場合は、清潔と保湿ケアを徹底していれば自然と治まっていきますが、まれに症状が悪化してしまい、強いかゆみや赤くジュクジュクにただれてしまうことがあります。
症状がひどい場合は、小児科または皮膚科を受診し、早めに対処することが必要です。
乳児湿疹の主な原因は皮脂の過剰分泌や乾燥
乳児湿疹の主な原因としては、生後2ヶ月頃までは皮脂の過剰な分泌による毛穴の詰まり、生後3ヶ月以降は急激に進む肌の乾燥であることが一般的です。
赤ちゃんの皮膚の厚さは大人の約半分ほどしかなく、水分量を保つことができず、外部刺激から肌を守るバリア機能も未熟です。些細な刺激でも肌荒れを起こしやすいのです。
母乳やママの食事も乳児湿疹の原因?
母乳が乳児湿疹に与える影響は証明されていない
「ママが脂っぽい食べ物を食べていると赤ちゃんにニキビができやすい」など、乳児湿疹の原因のひとつとして、母乳が関係していると考える人もいますが、医学的な根拠はなく、母乳との関連性はないと考えてよいでしょう。
確かに母乳はママの血液をもとに乳腺でつくられるため、ママの食べたり飲んだりした物質が母乳中に微量に移行します。
厚生労働省では、授乳中のアルコールは母乳に入り乳児の発達を阻害するためアルコールを控えることや (※1)、授乳中のカフェインについても過剰摂取に注意(カナダ保健省では1日300mgまでとしている※2)するよう勧めています。
ただし、ママの食事内容などによって、母乳を通して乳児湿疹に影響を及ぼすという、明らかなデータはないため、あまり神経質になる必要はありません。
乳児湿疹が出たら母乳は断乳した方がよいの?
母乳が乳児湿疹に与える直接的な影響はないため、赤ちゃんに湿疹ができていても、母乳育児をやめる必要はありません。
母乳には赤ちゃんに必要な免疫物質や栄養がたくさん含まれているため、母乳はできるだけ続けてあげる方がよいでしょう。
赤ちゃんに乳児湿疹が見られたときは、まずは基本のスキンケアを毎日おこなうこと。それでも乳児湿疹が改善されないときは、アトピー性皮膚炎にかかっている可能性も考えられます。
湿疹が悪化したり、気になる症状があれば、まずはかかりつけの小児科や皮膚科を受診しましょう。
アトピー性皮膚炎と母乳の関連性は?
乳児期の一時的な症状である乳児湿疹に対して、かゆみのある湿疹がよくなったり悪くなったりを慢性的に繰り返すアトピー性皮膚炎。
母乳には免疫力強化機能や抗炎症機能などがあり、完全母乳ではなくとも母乳を長く続けることで、アトピー性皮膚炎・湿疹のリスクが下がる、またはその可能性があることがわかっています(※3)。しかしながら、その答えはまだ分かっていません。
一方で、乳幼児のアトピー性皮膚炎では多くが食物アレルギーを伴うことがわかっています。
近年、アトピー性皮膚炎によって皮膚表面のバリアが弱くなることで、食物アレルギーの原因物質が皮膚から体内へ移行し、食物アレルギーが発症するという考えが提唱され始めています(※4)。つまり、お母さんが摂取した母乳中の食べ物が原因で、赤ちゃんが特定の食物アレルギーを発症するわけではないということです。
多くの場合、妊娠中や母乳育児中のママが特定の食べ物を除去する方法は必要でないと思われますが、自己判断をせずに専門の医療機関を受診し医師の指示に従いましょう。
また、粉ミルクにしたからといって、アレルギー反応の発症率は変わらないともいわれています。どちらにしても、アレルギーが疑われた場合は、医師に相談しましょう。
アレルギー検査でアレルゲンを調べることも可能なため、専門の医療機関で相談してください。
母乳育児中に避けたい食べ物やおすすめの食べ物はある?
母乳育児中のママの食事制限については様々な意見があり、「●●を食べると質のよい母乳になる」や「●●を食べると母乳がドロドロになり詰まりやすいからやめた方がよい」などの話を耳にしたことがある人も多いでしょう。
しかし、そもそも「よい母乳」や「母乳の質」の定義はありません。
世界保健機関(WHO)の『赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイド/ベーシック・コース』では、種々の食品を充分に食べれば、必要なたんぱく質とミネラル、ビタミンが取れること、また母乳育児中に特別な食べ物を食べたり特定の食べ物を避ける必要はないとしています。
実際に、異なる栄養を摂取しているママの母乳を比較しても、成分にあまり違いはないことがわかっています(※5)。
また、乳腺炎の原因は、授乳時の抱き方や姿勢、吸着、含ませ方、吸い付かせ方、授乳頻度や回数であり、ママの食事内容との関連性は医学的には明らかになっていません。
そのため、食事による母乳への影響は神経質に考える必要はありませんが、偏った食生活は授乳中に限らず避けるようにし、栄養バランスを意識した食生活を送るとよいでしょう。
乳児湿疹は毎日のスキンケアで対策しよう
母乳育児中、ママが摂る食事内容や食べ物によって、赤ちゃんの肌荒れが起きやすくなる、といったことはありません。
乳児湿疹の予防・改善には、毎日のスキンケアが大切です。赤ちゃんの肌をできるだけ清潔に保つようにして、肌のバリア機能を高めるために、ベビーローションなどで保湿ケアをしてあげましょう。
それでも乳児湿疹がひどいときは、小児科や皮膚科で相談してみてくださいね。
※1 参考文献:厚生労働省 e-ヘルスネット 飲酒のガイドライン
※2 参考文献:厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
※3 参考文献:瀬川雅史 母乳育児の効果と母乳育児支援. 外来小児科 21(1): 15-21, 2018.
※4 参考文献:成田雅美. 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎. 臨床栄養 132(7): 968-973, 2018.
※5 参考文献: 山本よしこ. より良い母乳を出す食事は存在するか? -食べ物神話から母親を解放しようー. 小児科臨床 61(7): 1367-1373, 2008.