赤ちゃんのアトピーの原因と症状、保湿すると予防できるって本当?
赤ちゃんのアトピーの症状
「アトピー」は「アトピー性疾患」や「アトピー性素因」などといわれることもありますが、一般的には「アトピー性皮膚炎」と呼ばれることが多い皮膚の疾患です。赤ちゃんだけでなく、成長中の子供や大人になっても発症することがあります。
赤ちゃんのアトピーの症状は、主にカサカサと肌が乾燥し、かゆみのある赤い皮疹(ひしん)が現れます。頭部や顔をはじめに症状が現れ、耳が切れたようになることも。その後徐々に胴体や腕、脚へと広がります。「貨幣状湿疹」と呼ばれる円形の湿疹が現れるのも、赤ちゃんのアトピー症状のひとつです。
成長すると発症部位に変化があり、幼小児期には関節部分にかゆみやジュクジュクの皮疹症状が、大人になると主に上半身に皮疹が現れるようになります(※1)。
赤ちゃんや小さな子供はかゆみを我慢することができないため、患部を掻き毟ってしまうと傷口から雑菌が入り、とびひを引き起こす恐れもあります。
赤ちゃんのアトピーと乳児湿疹との違いは?
赤ちゃんのアトピーとよく似た症状として、乳児湿疹が挙げられます。乳児湿疹は、脂漏性湿疹や乾性湿疹などの総称で、生後間もない新生児から1~2歳になるまでの乳幼児期に見られる肌荒れ症状です。かゆみを伴う湿疹が出るため、アトピーの症状とよく似ており、医師でも正確に区別するのが難しいといわれています。
乳児湿疹は、かゆみや湿疹だけでなく、ジュクジュクやカサカサ、ニキビや皮膚の炎症など、肌荒れのタイプも原因も様々なところが特徴です。
また、赤ちゃんのアトピーと乳児湿疹を見分けるポイントは、症状が慢性的に繰り返し起こるかどうかを確認してください。乳児湿疹は、赤ちゃんの成長に伴い自然に改善されるもので、平均的に生後6ヶ月~1歳の間では治まります。一方で、アトピーは一度治っても、繰り返し発症します。
日本皮膚科学会のアトピーに関するガイドラインによると、乳児の場合は2ヶ月以上、その他の年齢では6ヶ月以上、症状が慢性して反復するときに、アトピーと診断されると記されています。
赤ちゃんのアトピーはいつから?
前述でご説明したとおり、生後6ヶ月~1歳ぐらいの間は、アトピーと乳児湿疹を区別することは難しいといえます。中には、結果的に生後1ヶ月~3ヶ月ぐらいの新生児期に既にアトピーを発症していた赤ちゃんもいます。
一般的に、赤ちゃんのアトピーは、生後6ヶ月以降に症状がひどくなるケースが多いです。この頃に、アトピーに該当するような症状が繰り返し発症する場合は、アトピーの発症を疑った方がよいでしょう。
アトピーは症状が悪化したり好転したりと繰り返されるため、一時的に治っても安心して放置しないようにしましょう。
赤ちゃんがアトピーを発症する原因は?
赤ちゃんのアトピーの原因は未だに解明されていない部分が多く、はっきりとした原因がわかる訳ではありません。赤ちゃんのアトピーが疑われる場合は、以下のような原因となる得る事項(※2)をもとに、早めに専門の医療機関でアレルギー検査をしてもらいましょう。
- 遺伝的要素(アレルギー体質)
- 環境的要素(大気汚染、食品添加物、化粧品の化学物質)
- 摂取要因(食べ物)
- 吸引要因(ダニ、動物の毛、花粉)
- 心理的要素(ストレスや疲れ)
1.遺伝的要素
両親のどちらかがアトピーである場合は、遺伝から赤ちゃんもアトピーになる可能性があります。しかし、アレルギーの遺伝的要素があっても、必ずしもアトピーを発症する訳ではありません。
もしもママ・パパのどちらかがアトピーで辛い想いをしてきたならば、赤ちゃんにも同じ想いをさせないように、しっかり予防してあげたいものですね。
2.環境的要素(大気汚染、食品添加物、化粧品の化学物質)
大昔にはなかった、排気ガス、食品添加物、化粧品や衣類の化学物質がアトピーの原因になることも。赤ちゃんが口にする食べ物はもちろん、スキンケア製品や肌に触れる衣類も、できるだけ自然由来のやさしいものを使いましょう。
3.摂取要因(食べ物)
赤ちゃんがもともと特定のアレルゲンを持つ、アレルギー体質である可能性があります。中でも食べ物によるアレルギーが多く、生後すぐから1歳の間は牛乳や卵、小麦などでアレルギーを引き起こしやすいです。
母乳育児中のママの食事が赤ちゃんのアトピー発症に与える影響は、専門家によって意見が別れますが、直接的な影響はないとの見方が強いです。
4.吸引要因(ダニ、動物の毛、花粉)
赤ちゃんが日頃過ごす生活環境において、ダニやペットの毛からアレルギー反応を起こし、アトピーの原因となる可能性があります。掃除機をかけたりこまめに喚起して、ハウスダストを減らしましょう。赤ちゃんの肌に直接触れる寝具も清潔を保つようにし、こまめに洗濯してください。
5.心理的要素(ストレスや疲れ)
外部の気温や生活環境、衣服のこすれ、トイレの回数といった些細なことも赤ちゃんがストレスを感じる原因です。ストレスを溜め込むと、免疫力が低下しアトピーの発症に繋がりやすくなってしまいます。
日常生活において、赤ちゃんの表情などをよく観察して、ストレスを感じていないか、体調に変化はないかをよく注意してみるのもアトピー予防には大切です。
赤ちゃんのアトピーを予防するには?
新生児からの保湿ケアでアトピー発症リスクを低下させる
赤ちゃんのアトピー発症を予防するために必須なのが保湿ケアです。2014年、国立成育医療研究センターの研究によって、新生児期から生後6ヶ月間の保湿剤の塗布により、アトピー発症リスクが低下することが世界で初めて明らかになっています。
同研究では、家族にアトピー発症者がいる赤ちゃんをランダムに2グループに分けて、ひとつのグループの赤ちゃんたちには毎日全身に保湿剤を塗り、もう一方の赤ちゃんたちには乾燥部分にのみワセリンを塗って検証をおこないました。
この結果、下図のように前者のグループの方が、アトピー発症リスクを32%割以上低下することが判明したのです。

画像出典:国立成育医療研究センター プレスリリース(※2)
赤ちゃんの肌は一見みずみずしく潤っていても、乾燥しやすいので保湿ケアを怠らないようにしましょう。乾燥肌を放置すると、アトピーの原因であるアレルゲンが肌内部に入り込みやすくなってしまいます。
また、お風呂上がりは10分ほど過ぎると急激に水分が失われて乾燥が進みます。お風呂上がりは特に入念に保湿ケアをしてください。
お風呂の入れ方にも注意
赤ちゃんの肌は洗い過ぎると角質がはがれ、バリア機能の低下に繋がります。お風呂に入れる時は、低刺激のベビーソープをしっかりと泡立てて、泡を乗せて手で撫でるように洗います。お風呂は1日に1回で十分です。
お風呂の温度や入浴時間にも注意を払ってください。お湯が熱過ぎると必要な皮脂が取り除かれてしまいます。お湯の温度は38度前後にし、湯船は長湯し過ぎず5~10分程度浸かるようにしましょう。
赤ちゃんがアトピーになったときの治療法
ママ・パパががどれだけ予防やスキンケアに力を入れていても、赤ちゃんがアトピーになってしまう可能性があります。アトピーが疑われるときは、まずはかかりつけの小児科や皮膚科を受診するようにしてください。
診断後に、診断後にステロイド系の外用薬を処方されることがありますが、医師の指示に従って用法・容量を守って使うことが大切です。ステロイドの副作用を心配するママもいますが、自己判断で薬を止めたりしないでください。
日常の生活の中では、できるだけ赤ちゃんの肌の清潔を保つようにします。汗をかいたり、よだれや食べこぼしで肌が汚れたときは、やさしく取り除きます。また、顔や全身の保湿ケアを習慣付けるようにしましょう。
※1 参考文献:日本皮膚科学会ガイドライン アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016 年版
※2 参考文献:特定非営利活動法人日本アトピー協会 アトピー患者の皆様へ アトピーの原因
※3 参考文献:独立行政法人国立成育医療研究センター 世界初・アレルギー疾患の発症予防法を発見